薬学部の物理化学の勉強法|式暗記をやめて単元のつながりで解く

監修久松 賢三ウェルズ家庭教師センター センター長プロフィール
最終更新: 2026-09-28

物理化学で式を覚えて問題集を回しているのに、少し条件が変わると手が止まる。薬学部で起こりやすいのは、公式が足りないことよりも、その式がどの単元のどの考え方から出てきたかが切れている状態です。

物理化学は、熱力学・平衡・反応速度・電気化学などを別々に暗記する科目ではありません。物質がどのように動き、どの状態が安定で、どれくらいの速さで変化するかを、違う角度から見ています。式を答えとして覚える前に、このつながりを一枚の地図として持つと、定期試験でも薬剤師国家試験でも問題文を読み解きやすくなります。

物理化学で式暗記だけが苦しくなる理由

式だけを覚える勉強は、短い計算問題には対応しやすい反面、「なぜこの量を求めるのか」「どの条件ならこの式を使えるのか」が抜けやすい方法です。単位や符号、比例・反比例の関係が曖昧なままでは、数字が変わっただけで別の問題に見えてしまいます。

たとえば平衡、熱力学、反応速度は、授業では別の章として進みます。しかし問題を解くときには、系の変化をどう表すか、どの量を比べるか、時間を含めるかといった判断が重なります。単元ごとにノートを閉じてしまうと、この判断の道筋が見えません。

式暗記を完全にやめる必要はありません。必要なのは、式を最初の記憶ではなく、理解を確認するための最後の記憶に置き直すことです。

単元をつなぐ4つの軸を先に押さえる

新しい単元に入るたびに、次の4つを同じ順番で確認します。教科書の章立てではなく、この軸で見直すと、式の役割がつながります。

確認する軸考えることつながる単元の例
対象何を一つの系として扱うか気体・溶液・相平衡
状態いまの状態を決める量は何か温度・圧力・濃度・電位
変化何がどちらへ動くのか平衡・自発変化・拡散
時間変化の速さをどう見るか反応速度・半減期

この表を、各章の最初のページに短く書き足してみてください。たとえば反応速度の式を見たら、「濃度という状態が、時間とともにどう変わるかを表している」と言葉に戻します。式の前に意味が出てくる状態をつくるのが目的です。

熱力学から平衡、さらに電気化学へは、自由エネルギーが橋になります。標準状態での関係として、講義で使う記号や前提を確認しながら、ΔG°=-RT ln Kは自由エネルギーと平衡定数を、ΔG°=-nFE°は自由エネルギーと標準電位を結びます。二つを別の公式として覚えるのではなく、「平衡定数と標準電位は、どちらも自由エネルギーの見方を変えた量」と捉えると、式を選ぶ理由を追いやすくなります。

平衡が変化したあとの最終的な偏りを扱うのに対し、速度論はそこへ近づく速さを扱います。速度式は濃度と反応速度の関係を、Arrhenius式は温度・活性化エネルギーと速度定数kの関係を結びます。どの近似や条件を置くかは講義で確かめながら、平衡と速度を同じ問いとして混ぜずに考えると整理しやすくなります。

量子化学から分光法へは、エネルギー準位の差と観測値をつなげます。準位差ΔEと光の周波数の関係はΔE=hνで表され、Beer-Lambertの関係は、その光を試料に通したときの吸光度を濃度や光路長と結びます。どの遷移を扱うか、どの条件で近似するかは講義や実験の設定で確認しつつ、「量子化されたエネルギー差→光の波長・周波数→吸光度という測定値」の順にたどると、分光の式が孤立しにくくなります。

「何を比べている式か」を一文にする

公式の横には、記号の説明だけでなく「この式は何と何の関係を比べているか」を一文で添えます。たとえばエネルギーに関わる式なら、どの状態との差を見ているのか、平衡に関わる式なら、どちら向きの変化を扱うのかまで書きます。自分の言葉で説明できなかった式は、まだ暗記の段階です。

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式を「使える形」で覚える3段階

公式集を眺めるだけではなく、各式を次の3段階で扱います。順番を守ると、知らない設定の問題にも戻れるようになります。

1. 先に言葉で説明する

式を隠して、「何を求める式か」「増える量と減る量は何か」「使うために必要な条件は何か」を口に出します。ここで詰まるなら、教科書の図や定義に戻る段階です。

2. 単位と符号を確かめる

数値を入れる前に、左右の単位がそろうか、増減の向きと符号が合うかを確認します。計算後に答えだけを見るより、途中で不自然さに気づきやすくなります。

3. 条件を一つ変えてみる

温度、濃度、圧力、時間のうち一つを変えるときは、ほかの条件を一定としたときに、その単元のどの式が何を表すかを特定してから結果を予想します。正確な計算ができなくても、増える・減る・変わらないを言えるかで理解の穴が見つかります。

問題演習では逆向きにたどる

問題演習では「覚えた式を探す」より、問題文から逆向きにたどります。最初に問われている量を丸で囲み、次に与えられた条件を状態・変化・時間の軸へ振り分けます。その後で、間をつなぐ定義や式を選びます。

間違えた問題は、解説を写すだけで終わらせません。「式を知らなかった」のか、「使う条件を見落とした」のか、「単位や符号で崩れた」のかを一つに分けます。同じ誤答でも原因が違えば、次に戻るページも変わります。

特に国試形式の問題では、問題文の全情報を一度に計算へ入れようとしないことが大切です。まず何を問うているかを決め、関係しない情報を脇へ置く練習を重ねると、知識の取り出し方が整います。

試験前に戻るための復習ノートをつくる

試験前に見直すノートは、公式を全部並べたものではなく、単元同士を結ぶためのものにします。見開きの左に「定義・図・変化の方向」、右に「使う式・条件・間違えやすい点」を置くと、理解と計算を行き来できます。

一つの単元を終えるたびに、「この考え方は次のどの単元でも使うか」を一行だけ加えます。完璧なまとめノートを作るより、授業と問題演習のたびに戻れる地図を少しずつ育てる方が、物理化学では役に立ちます。

式が増えるほど、暗記だけで押し切るのは難しくなります。式を意味へ戻し、単元の間を往復できるようにすることが、定期試験と国家試験の両方へつながる土台になります。

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